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 トライアスロンへの想い
平成18年10月4日
昨年10月『月刊トライアスロンJAPAN』NI投稿した原稿を加筆修正したものです。
原稿が長すぎるという理由で掲載されませんでしたので、こちらに掲載しました。
1981年8月、鳥取県皆生温泉で始まった日本のトライアスロンは、‘06年の夏で26回目の大会を迎えた。

‘81年以降、トライアスロンは、「
島興し及びまち興し」の起爆剤として、全国で200を超える大会が開催されるようになった。しかし、現在開催されている大会は120大会弱と大幅な減少傾向にある。‘06年で20回を数えた北海道「日本海オロロン大会」は’06をもって閉幕した。(‘07年のT/Jのレースカレンダーでは、100大会を切っていた。)
私や私のチームBEARSが好きな大会の一つに新潟「村上国際トライアスロン大会」がある。‘87年が第1回開催なので’06年で20回の記念大会を迎えたハズなのにそれらしきセレモニーの欠片(かけら)すらなかった。まさか忘れているとは思えないのだが・・・
この大会、‘97年の第11回大会の参加者は730名を超え、東北でも屈指の人気大会だったが、’06年はエリート、リレーの部を合わせても400名弱という参加者に終わった。

また、「宮古島ストロングマン大会」と並び、人気を誇った「徳之島トライアスロン大会」、‘97年に650名を超えた参加者が、10年後の‘04年は200名を切る何とも寂しい大会となった。その後、関係者の努力によってリレー部門を入れて300名ほどに回復したが・・・
 トライアスロンの聖地、ハワイ出場の権利が掛かった「琵琶湖大会」は‘85年から始まったが、’97年13回大会を持って中止となった。@ボランティアの確保、A地域振興に効果が薄い、B自治体の負担が重い。というのが主な理由だったと記憶している。そのアイアンマン大会は、3年間の空白期間ののち、長崎県五島市に場所を移し、‘06年6回目を迎えた。しかし、6回目を迎えたこの大会、募集人員1,200名に対し、参加者は700名をわずかに超えるものだった。

一方、諸外国のトライアスロン事情はどうだろう・・・
トライアスロン発祥の地、アメリカを始めとしてオーストラリア、ニュージーランド、ドイツ、フランス、イギリスとトライアスロンの人気は高い。特に凄いのは「ロンドントライアスロン大会」で参加者がなんと10,000名という途方もないビッグ大会である。そのうちの約半数の4,500名が初心者で4,500着のウエットスーツとバイクが売れるという何ともすさまじい数である。(マイケル・トリーズ氏のMSPOより抜粋)日本で最大人気の宮古島大会ですら、参加者が最も多かった第15回のときで1,500名だったことを考えると、いかに大規模な大会か解って頂けると思う。ちなみにイギリスの人口は日本の約半分にあたる6,000万人である。

‘81年に日本で初開催されたトライアスロンは、‘90年代には、新興スポーツとしての新鮮さや物珍しさに加えてバブル景気にも後押しされ、最大時200を超える大会が開催されたが、余りにも早すぎる近年の凋落傾向について私なりに考察してみたい。

@バブル景気が弾けた。A少子高齢化が進みトライアスロンをやる若者が少なくなった。B少子高齢化が進み、ボランティアが集まらない。C旅行(スポーツ)の形態が大きく変化した。D主催者側の年齢層が上がり、大会にかける気概が薄れた。E主催者側の意識や熱気が次世代(後輩)に正しく伝わっていない。F首長の交代が大会の継続を左右した。F道路許可を取るのが一層難しくなった。GB/C(費用対効果)が薄れた。・・・などが一般的に考えられる要因と言われている。

しかし、これだけの理由が主たる要因だろうか?
私は、趣味のスキーやトライアスロン、アドベンチャー大会に参加、主催しながら、仕事(※1)の側面などからも、これらの大会を興味深く観察してきたが、上記に示した要因ばかりではないように思う。

まず、
@開催理由が解らない。A大会コンセプトが見えない。B広報活動の不足。C各関係機関とのコラボレーション不足。などが大きな要因のような気がする。

【(※1):造園家(ランドスケープアーキテクト):都市公園やリゾートの計画設計から、集合住宅の外構造園設計、住民参加のまちづくり、などに従事】
【@何故、大会を開催するのか】
・トライアスロン大会を開催する理由?
・地域観光振興?それとも青少年の健全育成?その他・・・
・しっかりとした予算編成が出来ているのか?
・B/C(費用対効果)を考えているのか?
・大会終了後の反省会(報告会)、監査は?
【A大会のコンセプト】
・トライアスロン大会のコンセプト(基本理念)が見えない。
・コンセプトが明確であれば、関係者の考え方に多少のズレが生じても解決(方法論)することは充分可能である。
【B広報活動】
・どのような広報活動をしているのか?
・専門のスタッフはいるのか?
・大会ホームページの有無、(日々更新をしているのか?掲示板はあるのか?)
・どのような情報発信をしているのか?
・スタッフは各地の大会に出向き、情報収集や自大会のPRをしているのか?
・市町村の他のイベントとコラボしているのか?
【C関係機関とのコラボレーション】
・住民説明や議会説明などで、市民との合意形成が取られているのか?
・役所、観光協会、警察、消防、病院、学校、地権者などの合意形成はとれているか?
・首長が交代しても継続していけるのか?
【Dスタッフの勉強会・講習会】
・定期的にスタッフ(ボランティア)の勉強会・講習会を開催しているのか?
・安全講習会はやっているのか?
・・・以上のような項目について、しっかりとした要項が出来ているのか甚だ疑問が残る。
そして
「どこを向いて大会運営をしているのか」ということが、主催者の重要な問題である。

私は、地方のトライアスロン大会に長く参加させて貰うようになり、ある時期から運営委員を仰せつかったことがあった。その時の会議で「トライアスロンは、目的ではなく、手段と考えて携わって行かなくてはならない。」と自説を披露したところ、一瞬、座が白けたことを今でも鮮明に覚えている。どういうことかというと、トライアスロン開催は、「その地域を宣伝して、まちの自然や歴史・文化、風土、芸術・文化などを知って貰う絶好の機会であり、トライアスロンはその目的(知って貰う)を達成するための手段に過ぎない。」と説明したことがあった。トライアスロン愛好者・主催者にとって、手段に過ぎないと言われれば、文句の一つも言いたくなるのは充分承知の上での発言であった。

多くのスタッフは、「@順番が回ってきたからやった。A上(先輩)からの命令だからやった。」という理由が殆どではないだろうか?これでは、
地域が活性化(自立)するとは到底思えない。オシム監督ではないが、「考えてやってない」ということだ。折角のイベントも、獲得した予算を無駄に消化するだけで、定着させ持続可能なイベントとは言えない。

‘06年のアイアンマン五島大会はひどかった。
大会内容そのものではない。主催者が何処を向いて運営しているかということについてである。その理由として、参加費の大幅な値上げがある。‘05年まで、¥38,000―だった参加費が’06年は、¥45,000―と約2割の大幅な値上げがあった。その理由は、市町村合併に伴い、大会への補助金が減額されたという理由からだった。それは可笑しい。何故か?市町村合併は、市町村にとってはバラ色の歓迎されるべき施策だったのではないか。

それに、外国からも含め全国各地から、1,000名を優に超す選手・家族や大会関係者が五島市を訪れるという、まさに五島市を全国(世界)にアピール出来るまたとない最高のイベントではなかったのか?
その上、選手は最低3泊しなければ出場出来ないとなれば、五島市にもたらす経済効果はもとより、広告宣伝などの波及効果は、計り知れないものとなる。実行委員会に質問したところ、商標権料についてはお答えして貰えなかったが、アイアンマン大会を誘致することの費用対効果は大きいハズである。・・・にも拘わらず、選手にいとも簡単に負担を強いる主催者の短絡的な考え方は再考して貰いたいものだ。

JTU(日本トライアスロン連合)は、いかにしてトライアスロンをメジャースポーツにしようとしてるのか、ホームページをみても方針・方策が見えて来ない。各地で開催される大会に、JTUがどのように拘わっているのか、またJTUが主催・後援する大会とはいかなるものか、具体的なことは何一つ見えない。会費がもたらすメリットとは何なのか?情報が遅いうえに、正しい情報公開がなされているとは思えない。

また、東京都区内・都下で開催されるアクアスロン大会(プールを使ってのスイムとラン)、トライアスロンの開催が最終目標と位置づけて開催のハズなのだが、いつのまにかアクアスロン大会そのものが主たる目的になっているように思えてならない。そして私は、スタッフの貸し借りは早く止めた方が良いと常々言ってきた。都区内・都下で開催するトライアスロンは夏休みが終わった9月に集中する。毎週のようにスタッフの安易な貸し借りでは、なかなか自立した開催・運営は難しく、後継者も育たない。何よりも家族の付き合いがおろそかになる。そのためには、年一回の開催だけれども時間をかけて、理解者(賛同者)を増やす努力をしなければならない。

ゆっくり長く
泳ぐ。ゆっくりのんびり漕ぐ。ゆっくり楽しく走る
LSD(Long Slow Distance)長く、ゆっくり、走る(漕ぐ)・・・
トライアスロンスポーツは、競技としてはもとより、生涯スポーツとして取り入れても、健康増進に最適な、素晴らしいスポーツである。主催者は、何故
@トライアスロンなのか、A開催する理由は何か、B何処を向いて開催・運営するのか、もう一度原点に返って考える時に来ていると思う。

こういうことについて、真剣に取り組まない限り、トライアスロンスポーツとしての
未来や地域活性化の明日はない。

                                スキーとトライアスロンのチーム BEARS代表:矢口正武